パールの穴開け加工について
真珠をジュエリーとして仕立てる際に工程として必ずといってよいほど、穴を開けるという作業が必要となります。
中には上質の真珠を、敢えて穴を開けずに加工したリングなどを見かけることがありますが、見かけるといった程度で、ほとんどは穴を開けて加工しています。
球状の宝石は、ネックレスにしてもリングにしても固定するためには穴がその大きな役目を果たします。
ネックレスにするには貫通した穴を、リングなど片面を見せるアイテムには台座に固定するための片穴を開けます。
真珠の場合には硬度が低いため比較的簡単に開けられますが、柔らかな材質のため特に注意しなければならない点もあります。
貴石などの固い鉱物に穴を開けるためには、長年の修行と知識が必要です。中には口伝で次世代に引き継がれる特殊な技術を要するものもありますが、パールの穴開けに関しては職人ではない私も行うことがあります。
もちろん、専用の工具機材があり、先輩からの教えもあってはじめてできるようになる作業なのですが、これがやってみると奥が深くたいへん興味深い作業です。興味深いなどというと、大切な宝石に穴を開けるのにそんな軽々しいことでは困る、と言われそうですが、実際はとても緊張して行います。
まして、お客様からお預かりした大事な真珠にこの作業を行うときには、体調の良い、晴れた日の午前中を選ぶようにしています。
仕入れたパールを思い描いた商品にするために穴開け作業をしていたある日、とてもびっくりしたことがあります。
15mmの大きなそしてとてもきれいなグレーの色味の南洋真珠に貫通穴を開けていた時のことです。いつも開けている真珠よりも大変固く、専用の機材である穴開けドリルの刃が一向に前に進みません。それでも、いつか開くだろうと休み休みドリルを動かしていたところ、ちょうど穴が貫通した瞬間、パン!と、とても大きな音がして煙がもうもうとたち込めました。
何度も何度もドリルを止めては動かし、止めては動かしを続けていたからモーターが壊れてしまったのかしら?と飛び上がる程びっくりとしましたが、モーターは何ともありません。どうやら煙は削られた真珠の粉が立ち込めたからで、音は穴が開けられた瞬間、真珠から出た破裂音のようなのです。
慌てて真珠をドリルから外し、矯めつ眇めつ点検しましたが真珠は開けられた穴以外、どこにも傷は入ってはおらず、何だか平然としているように見えます。そして、あたりにはぷーんと臭いにおいがしてきました。
この匂いがなんとも動物的というか何というか、とにかく臭いのです。
真珠という宝石を語るのに夢のない話で恐縮ですが、チーズ臭のような匂いです。
おそらく、貝という生き物から生まれた真珠のため、成分であるたんぱく質が何かの拍子に発酵してしまったと思うのですが、その時の大きな音と匂いと、焦ってなめまわすように見たときにみせたその真珠の、まるで何事もなかったかのような平然とした様子に何だか可笑しくなって、ひとり大笑いしてしまいました。
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